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2022.12.26

【SDGsパートナー紹介】世界初?!おむつ灰の再資源化に成功!/西条高校SSHセスキ合成班

【SDGsパートナー紹介】世界初?!おむつ灰の再資源化に成功!/西条高校SSHセスキ合成班

セスキ合成班メンバー 上段左から:松本好未さん、植田紗世さん、吾妻春汰さん、玉井涼さん、新本友季さん、横井良音さん
下段左から:村上大和さん、曽我部亮さん、渡邊有さん、佐伯叶愛さん

 

ゴール9 ゴール11 ゴール12

 

2018年度に文部科学省からスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けた西条高校。活動は5年目に突入しました。

スーパーサイエンスハイスクール(通称:SSH)とは、先進的な理数教育を実施する高等学校などを文部科学省が指定するもので、将来の国際的な科学技術関係人材を育成するため、大学や研究機関と共同研究をおこなっています。

そんななか、西条高校のSSH事業として、おむつ灰を再資源化する研究を進めていたセスキ合成班のメンバーが、「STI for SDGsアワード最優秀次世代賞」を受賞。
昨年度から始めた研究の成果を東京で発表してきた、西条高校SSHセスキ合成班のメンバーのみなさんにお話を伺いました。

 

2年越し、念願の実験成功

ホームセンターやドラッグストアで見かける「セスキ」。セスキは、鉱石から採れる天然資源で、針状の結晶からなる粉末状のもの。油汚れや皮脂汚れを落とすために、掃除や洗濯に使われています。
実は、現在販売されているセスキは、天然資源に依存していて、人工的に作られた例はなく、メンバーたちの研究は世界初といわれています。

―――研究を始めたきっかけは?

取材風景写真
研究を始めた3年生 左:曽我部亮さん 右:渡邊有さん

「花王株式会社さんから、『おむつを処理した灰を活用する方法を、高校生ならではの視点で研究してほしい』とお話をいただいたことがきっかけです。今の3年生が2年生のときから始めた研究で、今年2年目になります。西条市はごみの排出量が県内でも多いという状況を知って、自分たちの活動によって自分たちの手で西条市のSDGsやごみの減量化に貢献できるんじゃないかと考えて始めました。」

―――どんな風に研究を進めましたか?

実験風景写真
実験の様子 左:植田紗世さん 右:吾妻春汰さん

「まずは、おむつ灰から何を作るかを考えました。重曹などの案も考えましたが、天然資源に依存しているセスキができれば、環境にも配慮できるんじゃないかと思って。
そのあとは、何度も条件を変えて実験して、その実験結果になった要因を考えて、トライアンドエラーを繰り返しました。似たような事例を調べて実験を繰り返すも、なかなか思うような結果が出ず半年ほど悩んだ時期もありました。」

2年生写真
3年生引退後、部活動をしょって立つ2年生 左:横井良音さん 右:新本友季さん

そんななか西条高校の代表として出場したのが、毎年行われる全国のSSH指定校が集まる発表会。セスキ合成班の発表を聞いた専門家からもらった助言を、高校に帰って早速試してみることに。すると、今まで黒っぽかった液体が透明に。実験は大成功。

ろ過後の写真(失敗・成功例)
実験でおむつ灰をろ過した後の液体 左:失敗例、右:成功例(提供:西条高校)

「実験が成功した場面に3年生が不在で、全員が立ち会えなかったのが残念でしたが、明らかに今までと違う色で感動しました。」
コロナ禍で思うように部活動ができず、シフトを組むなど工夫してきたメンバーたちにとっては、きっとこの上なく達成感が得られた瞬間だったことでしょう。

セスキ針状結晶
実験で生成したセスキ針状結晶

STI for SDGsアワード最優秀次世代賞受賞

―――「STI for SDGsアワード」に応募したきっかけは?

「先生から『こんなのがあるよ』って教えてもらったんです。自分たちの活動を評価してもらえるし、今後の指標にもなるという意味でも応募しました。」

―――アワードの感想を教えてください。

アワードでの発表の様子
アワードでの発表の様子(提供:西条高校)

「本当に楽しかった!YouTubeでも配信されていたし、専門家やもちろんほかの出場者もいて、自分たちの話を興味や熱意を持って聞いてくれる。そんな環境が整っていたので、プレゼンで自分たちのこれまでやってきた活動を話すのにも熱が入りました。」

また、ほかの団体との交流もできたとか。出場者同士がつながり、その場で新たなアイディアも出てくるなど、次の研究に発展していくかもしれない可能性を感じたそうです。

表彰状授与式写真
表彰状をもったメンバーたち(提供:西条高校)

花王株式会社と京都大学と連携して行った研究

企業・大学と連携して研究を進めたことも評価ポイントだったという今回のアワード受賞。

―――花王株式会社と京都大学とはどんな連携をしましたか?

「研究方針について助言をもらったり、分析に必要な装置を借りたり。X線を使った分析など、高度なことは高校ではできないので、花王株式会社さんや京都大学さんに依頼しました。」

これからの研究の行方

西条市で1年間に出るおむつから作ることができるセスキは、なんと市販の500g入りのセスキ1袋を西条市民全員に配れるくらいの量。

―――私たちも使えるようになりますか?

「まだまだ研究が必要です。おむつ灰からセスキが生成できることを発見できたという段階。今後は、これを実用化していくために、安定的に生成できたり、不純物が混ざらないような方法を確立したり、低コストでできるだけ生成時のエネルギーを抑えられるように研究を進めていかなければと思っています。
セスキの生成時に二酸化炭素(CO2)を吸うので、CO2の削減にもなると仮定しているんですが、生成時の電力量やおむつ灰を輸送するための燃料などがまだ計算できていないので、CO2の削減につながるとは言い切れません。この計算や実用化に向けた生成方法などを後輩たちに引き継いでほしいですね。」

来年には、メンバーたち個人の名前で特許を申請する予定。
今回の実験成功は、将来大きなイノベーションを起こす可能性を秘めたもの。どんな風に活用されるか楽しみです。

私たちにできること

―――市民の皆さんに意識してほしいことは?

「再資源化の研究をしてみて、ごみを減らすことはもちろんですが、資源になるものは単なるごみとして出さず、適切に処理することが大切だと感じました。
今まで当たり前に作られた製品をこれからも続けて使い続けるためには、企業に任せきりにするのではなく、私たちも環境に配慮した買い方や使い方を意識しないといけないと思います。」

来年度からは、ごみ袋が有料化。私たち市民も、何気なく出しているごみのこと、資源化できるごみがあること、私たちの住む西条の環境について考えるべき時期が来ています。

現在は、おむつの回収やセスキの販売には至っていませんが、『世界中に使用済みおむつの活用法を広めたい』と意気込むメンバーたち。
2030年に向けて、商業科とも連携しながら販売にこぎつけられたらと、力強く語ってくれました。
今後のメンバーたちの活動の発展に期待です。

STI for SDGsアワードの詳しい情報

国立研究開発法人科学技術振興機構HP(外部リンク)

西条高校

西条高校HP(外部リンク)